セリフの入った吹き出しにイラストが添えられた“吹き出しスタンプ”。LINEのトーク画面を活かしたそのアイデアは、クリエイターズマーケットでブームになりました。

流行が少し落ち着いてもなお、ランキング上位に君臨し続けるのは「吹き出しに隠れた小さい動物たち」スタンプ。作者のビーバーズさんに、ヒットの秘けつを伺いました。
 
nagitop

吹き出しに隠れた小さい動物たち
nagi

意見を出し合い、ときには衝突しながらも、作品をつくる

――「ビーバーズ」は、ナギさん(男性)とnayutaさん(女性)のユニットなんですよね。まずは、その成り立ちから教えていただけますか。

ナギ:僕はWeb系の何でも屋として、ネットを介するさまざまな仕事をしています。もともとクリエイターズスタンプにも興味はあったんですが、素人の作るようなものが売れるわけがないと思っていたため、初めのうちは手を出していませんでした。ところが、蓋を開けてみたらサービスがすごく盛り上がっていて……何もせずにあきらめたことを後悔していたんですよね。

そのうちに、友人からスタンプの制作依頼があり、得られる利益を試算してみたんです。すると、スタンプを購入してくれるユーザーを少なめに見積もっても、充分に勝ち目があった。それでようやくチャレンジすることを決め、スタンプ制作のためにユニットを立ち上げました。結局、そのスタンプは「そこそこ」な感じで買っていただいたのですが、100位に届かず。それで逆に火がついて、本腰を入れてスタンプの研究を始めました。

今の「ビーバーズ」は、始めは僕ひとりのアカウントでしたが、イラストを描くのが好きなnayutaも誘い、二人組のユニットにしました。僕は一人だと途中で飽きて投げ出してしまうタイプなので、誰かと一緒にやることで相手に対して責任が生まれ、続けるモチベーションができると思ったんです。

――作業はどのように分担しているのでしょうか。

ナギ:スタンプによってまちまちですね。たとえば最初の頃のスタンプは、僕一人。「べんぱつ宣言!」や「軽めのダンディー」など、変わったものを作りたかったんですよ(笑)。

ben

「パンダのぱん太と熊谷さん」は、ああでもないこうでもないと二人で意見を交わしながら作っています。もちろん、それぞれに感性が違うから、スタンプのネタひとつ取っても話し合いからケンカになったりして、なかなか難しいですけどね……。作業負担は軽減されるし、制作中のスタンプを多角的に見られるのはいいですが、もしかしたらあまりユニットでやるべきではないのかもしれません(笑)。

pan

描画ツールを使うことで、吹き出しを目立たせるアイコン的キャラに

――ヒット作「吹き出しに隠れた小さい動物たち」は、ほかの吹き出しスタンプブームが落ち着いてからも、根強い人気があります。その要因について、ご自身ではどう思われますか?

ナギ:「吹き出しに隠れた小さい動物たち」の特徴は、キャラが小さくて、吹き出しのうしろに隠れていること。キャラをあまり目立たせないほうが、「吹き出しスタンプ」というネタが活き、LINEのトーク画面にきちんと溶け込むため、サプライズ感のあるスタンプができると考えたからです。もちろん、キャラクターがかわいく見えるように相当工夫をしました。

b01d57821621936948947945e3c9d98f
上段がもともと作っていたキャラクター。ふわっとした体つきに愛されやすい顔つきで、手書きのような雰囲気に仕上げています。初めはこのキャラを使ってスタンプを作り進めていたのですが、17個くらいできたところで、ふと違和感をおぼえたんですよね。僕が作りたかったのは、トークの吹き出しを引き立たせるスタンプなのに、これではキャラを見せているだけじゃないかと

そこで、制作中のキャラクターはすべて捨て、ソフトに付属している描画ツールだけを使って、新しいキャラクターを作り直したんです。これは絵に温かみが出ないため、一般的なイラストの世界では考えられない、御法度のようなやり方。でも、キャラクターというよりアイコンの役割を果たすイラストを描くには、それが一番いい方法だと思ったんですよね。

そうして生まれたのが下段のキャラクターで、途中まで制作していたスタンプもすべてこのキャラに取り替えて「吹き出しに隠れた小さい動物たち」を完成させました。結果論ではありますが、初期のままだとキャラが悪目立ちしてしまい、今のようなヒットは望めなかったんじゃないでしょうか。

実際に、ツールを使わずきちんとキャラを描いた続編「もっと頑張れ!うさぎ団(吹き出しver.)」は少々にぎやかすぎたのか、あまりウケがよくありませんでした(笑)。

usa

スタンプの魅力を、わかりやすくユーザーに伝える

――では、吹き出しに限らず、売れるスタンプを作るコツについてはどのように考えていますか。

nayuta:いつも「売れるスタンプを作ろう」と狙っているわけではありませんが、シンプルにいえば、やはりわかりやすさ汎用性だと思います。そして、特徴となる要素はひとつだけじゃだめ。

「かわいい」だけ、「わかりやすい」だけではなく、「かわいくてわかりやすくて実用的」みたいに3つくらいの要素が絡み合って、ようやくユーザーに受け入れてもらうためのスタートラインに立てるんじゃないでしょうか。今回の吹き出しスタンプなら「吹き出し」「かわいい」「シンプル」「汎用性が高い」という要素がありました。

実は、私の友達が吹き出しスタンプを使ったとき、それを送られたほうの人が「思わず買っちゃった」と言ってくれたらしいんですよね。それまでのスタンプも自分の友達は使ってくれていたけれど、そのまた友達まで広がっていったのは、これが初めて。シンプルで汎用性のあるものは広がりやすいんだなと実感できたし、とてもうれしかったです。

ナギ:ヒット作が「吹き出しに隠れた小さな動物たち」しかないのに偉そうに言えることはそもそもないんですが……とはいえ、僕らが気をつけているのは、まずは目に留まるかどうか。

メイン画像とタイトルが一覧に並んだとき、まずはタップしてもらわないと誰の目にも触れません。文字と画像をわかりやすくして、どれだけ興味を引くかが第一関門です。次に、一覧画面でいかに魅力を伝えるか。「かわいいキャラだよ」「意表を突いたアイデアだよ」など、作り手がユーザーに伝えたい魅力をきちんと表現できているかが大切なんですよね。

僕らの伝えたいことが10あったとしても、ユーザーに伝わるのは2か3くらいでしょうから、とにかくわかりやすさが重要だと思っています。そして最後は、使うシーンをイメージしてもらうこと。どれだけ好きなスタンプだと思ってもらえても、実際に使う場面を想起できないと、やっぱり買ってもらえません。どれも当たり前かもしれませんが、こういうポイントをきちっと押さえることを常に考えています。

■ヒットを生み出す3ポイント
・スタンプの企画趣旨や目的をきちんと考えて、目的に立ち返る
・特徴となる要素を最低3つ以上は盛り込む
・スタンプショップでスタンプの魅力を伝える工夫を忘れずに

TEXT: Sakura Sugawara

プロフィール

ビーバーズ。絵を描くことが好きなnayuta♀と、色々やってるナギ♂のユニット。

Twitter:https://twitter.com/nayutazz


みなさんからの質問コーナー

クリエイターズマーケットのLINE公式アカウントに寄せられた質問に、ビーバーズさんが答えてくれました(6/19追記)。

Q1:吹き出しスタンプをつくってるんですが、サイズは1pixel余白部分のこしてギリギリのとこで切ってつくってますか? それとも最大サイズまたは横幅だけは最大サイズでつくってますか?

ナギ:こんにちは。吹き出しスタンプは、なるべくいつものトークの吹き出しに近づけたかったので、まず吹き出しのサイズありきで作っています。スタンプを見てもらったらわかると思いますが、規定の「370×320」サイズは固定として、短い文章のものは短く、長いものはギリギリに作ってあります。もちろん規定にある上下左右の余白も残してあります。

Q2:どうしたらそんなにかわいい小さい動物をかけるんですか?

ナギ:かわいいと言っていただけてありがとうございます!! 技術的なことはまだまだ稚拙なのでえらそうなことは言えないのですが、こういうシンプルな顔立ち、からだつきのキャラでも、「実際にリアルに存在したら」を考えて描くことには気をつけています。あとは何度も何度も配置を動かしたり、時間を置いて見てみたりしていますよ!

Q3:何人家族なんですか?

ナギ:吹き出しどうぶつに出てくるキャラのことですね? あの子たちは、ほんとは家族ではなくお友達です! いまのところ、くま、パンダ、うさぎ、ねこ、こざる、コアラ、がいます。いずれもっとたくさん出してあげたいなと思っています!


▼こちらでクリエイターズスタンプの最新情報を発信しています!
linecreators
友だち追加